プライバシー保護の世界的な流れにより、これまで利用していた技術が使えなくなるケースが出てきています。サードパーティCookieもそのひとつです。これまで広告やデータ分析のためのターゲティング/トラッキングにサードパーティCookieを利用していた企業は大きな影響を受けることになります。
MightyHive株式会社(以下、MightyHive)の松崎亮氏はこの状況を「ユーザーをよりハッピーにするための過程」と捉え、マーケターがポストCookie時代へ向けて持つべきマインドセットと具体的なアプローチを紹介しました。
※本記事はトレジャーデータ株式会社が主催した「PLAZMA After 3rd Party Cookie〜Cookie規制後のデータ活用とマーケティング 〜」(2021年5月開催)のセッション「ポストCookie 時代への準備:マーケターの5つのアプローチ」をもとに編集しました。
GDPR、ITP、CCPAとプライバシー情報に関するデジタル関連の規制は世界的に進み、2022年には日本でも改正個人情報保護法が施行されます。まずはじめに、昨今の動向を確認しておきましょう。
GoogleのブラウザChromeでのサードパーティCookieのサポートを2022年に終了することが発表され、(※ 2021年6月24日に2023年末に延期との発表がありました)
2021年3月にはWebを横断して個人をトラッキングする代替的識別子の構築もしないことが発表されました。
2021年4月リリースされたiOSからは、全てのアプリに対してトラッキングやIDFA(Identifier for Advertisers/iOS端末の広告識別子)へのアクセスにユーザーのオプトインが必要になりました。
CookieはアクセスしたWebサイトによって作成されるファイルであり、アクセスしたユーザーの様々な情報が保存されています。Cookieに保存された情報の塊や繋がりはオンライン広告を中心にトラッキングやターゲティングにも利用されており、今日の世界30兆円を超えるデジタルマーケティングの市場を発展させてきた立役者です。
サードパーティCookieへの規制強化はマーケターだけの問題ではありません。ユーザーやパブリッシャーを含めた3方向を考慮した上で、プライバシーを遵守したインターネットのエコシステムをどう回していくのかという大きいテーマの中での決断とも言えます。
規制強化により、ファーストパーティデータの重要性は増し、ユーザーとの信頼関係がより重要になると考えられます。そのためにもマーケターは、データ戦略に関する準備を万全にする必要があります。
MightyHiveはデジタルの時代におけるマーケティングを推進する新しいタイプのパートナー企業として、データ戦略関連の情報を国内外で発信しています。
今回はその中から、この状況を危機ではなく機会として捉え、今まで以上にユーザーデータを活用するための具体的なアプローチを5ステップで紹介します。
ファーストパーティデータは自社のオプトインユーザーに関するデータです。サードパーティCookieやユーザーの同意を得ていないデータが使えなくなるということは、つまりファーストパーティデータ以外のデータが使えなくなるということです。
ファーストパーティデータはユーザーとのやり取りの中から獲得するものであり、自社チャネルが最重要ソースです。以前からユーザーロイヤリティを高めるために予算をかけていた企業には大きなアドバンテージがあります。
ファーストパーティデータに投資をして成功している企業の共通点は「ユーザーに対して良いサービスを提供する」という、基本に極めて忠実なことです。
例えばアメリカのバーベキューグリルメーカー「Weber(ウェーバー)」はレシピやグリルのTIPSを紹介するアプリを用いて、通常は売り切り型のグリルという商材において購入後も顧客エンゲージメントを高めています。
「hp(ヒューレット・パッカード)」やホームセンター「ACE HARDWARE」では、ユーザーに対するエクスペリエンスドリブンな考え方をベースにコンテンツ設計やデータ基盤構築を行っています。
Cookieに依存せずパーソナライズとエクスペリエンスにおいて大きな成功をあげている企業の多くは、数多くのエクスペリメント(テスト)を繰り返してより高いリターンをもたらすパターンを見つけ出す作業を行っています。
「エクスペリメント」とは、様々な変数に対してデジタルマーケティングを行うテストです。経験や勘ではなく、テストで分かった事実に基づいて高パフォーマンスへアプローチするためのものです。
ハーバード・ビジネス・レビューの調べでは、年間に15回のエクスペリメント広告を行った企業は45%のパフォーマンス向上が見られています。とはいえ年間で15回というのはむしろ少ない方であり、本当にパフォーマンスを向上させたいならば1時間に15テストを行うくらいでもよいのではないでしょうか。
様々な変数に対して仮説を立てると共に、固定概念を捨ててテストをすることでレベルアップできます。パフォーマンスが上がればファーストパーティデータも貯まっていく、というプラスのループを作り始めるには今が好機です。
GoogleはCookieやIDサポートの終了を発表する一方、プライバシーを守りながら最適な広告配信をしていくための「プライバシーサンドボックス」という技術も発表しています。この中には、グループ単位でIDを振って見込みユーザーをターゲティングしていく「FLoC」や、ブラウザ単位での処理を行う新たなリマーケティング手法「FLEDGE」等があります。
その対抗馬として、複数のアドテックベンダーやパブリッシャーが賛同する「Unified ID 2.0」と呼ばれる統一IDの取り組みも出てきました。どちらもまだアーリーステージではありますが、マーケターはこれらがどういうもので何をもたらしてくれるかを理解し、良いものであれば取り入れていく必要があります。
例えばアメリカの食品メーカー「モンデリーズ」は早いタイミングで既存技術への依存から脱却する方向性を示し、Googleプラットフォーム内でプライバシーが守られた新しいアプローチを試しています。新しい状況下でできること/できないことを切り分けてうまく利用している良い例です。
ユーザーレベルのトラッキングができなくなれば、マーケターサイドの計測手法もアップグレードする必要があります。その候補の一つが「マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)」です。
MMMはマーケティングミックスの統計モデルを構築して相関性等を分析するものです。昔からある手法ではありますが、デジタル上でより多く、より早くデータを計算できるので、Cookieに依存しないメジャメントフレームワークの筆頭です。
MMMではビジネスのKPIに対して何が影響したかを測る際、広告費等の内部要因だけではなく競合や経済的要因、消費者動向といった外部要因を対象にして分析モデルを構築できるため、マーケティング責任者や経営層向けにも重要なデータが可視化できます。
新たな時代や手法に適応しなければならない事業主にとって、一番の課題は組織と人材です。合わせて「リーダーシップを発揮できるか」と「バックアップする社内の情報共有があるか」も重要になります。
MightyHiveの所属するS4キャピタルグループは「データ」「コンテンツ」「デジタルメディア」の三つの柱としており、それぞれの専門性を持つ人材が「新たなプライバシー時代に何をすべきか」を考えて動きます。その有機的な相互作用が非常に有効に機能しています。
例えば、データセキュリティチームだけがCEOに説明をしても断片的になりますし、メディアチームの効率のためにプライバシーをおざなりにするわけにもいきません。それぞれのチームが連携して動くことが重要です。
Facebookは2020年、Oculusの開発者向けイベント「Facebook Connect」をバーチャルで実施しました。多くの部署が連携し、タレントと知見を集結させた結果、デジタルイベントでユーザーと出会い、つながり、体験をしてもらうという大きな成果を収めました。
テクノロジーの向上による正確なトラッキングやターゲティングでユーザーをID単位で捉えることで、デジタルマーケティング市場は30兆円を超えるまで発展してきました。そしてその時代が終わりを迎えようとしています。
これまでは高精度のユーザートラッキングにより企業側に都合のよいタイミングでメッセージや広告を出すことができました。しかしそれは本当にユーザーが望んでいることでしょうか。これから利用されるであろう精度が下がったターゲティングは、本当にマイナスでしょうか。
もしかするとそれは、ユーザーをよりハッピーにする「より良いターゲティング」かもしれません。
「良いものを良い形でユーザーに届ける」というマーケティングの基本スタンスと責任を再認識した上で、今後一緒に日本の業界をさらなる発展へと導いていけると嬉しいです。
セッション内容を受けて、トレジャーデータの山森が、松崎 亮 氏に質問しました。
MightyHiveについて、さらに詳しい情報をお知りになりたい方はjapan.sales@mightyhive.com までお問い合わせください。