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Shoot Beyond Borders:異文化を超え、信頼で築くリーダーリップ|トレジャーAI

作成者: Treasure AI|Jul 10, 2026 3:09:01 AM

「日本から、世界へ」。目標として掲げることは簡単なことかもしれないが、この言葉を実践するためには、言語の壁、文化の壁、習慣・風習の壁を超えて世界各国で信頼を獲得し、リーダーシップを取っていかなければならない。そして、それは決して簡単なことではない。2011年12月、3名の日本人が米国シリコンバレーで創業したトレジャーデータも、国内外の多くの企業から信頼を獲得しデータソリューション分野をリードする現在の地位を確立するまでには、様々な苦労や課題と向き合ってきた。
 
スポーツの分野でも、日本人のほとんどいない環境に単身で飛び込み、そこで言語の壁や文化の壁、価値観の違いなどを乗り越えて周囲の選手からの信頼を獲得し、チームをまとめるリーダーシップを発揮していくことも同様だ。それを実現し、現在も世界の舞台で活躍しているのが、前サッカー日本代表キャプテンで現在は米国MLS・LAギャラクシーのキャプテンを務める、吉田麻也選手である。トレジャーデータのスポークスパーソンも努めていただいている。
 
「Treasure Data Connected World 2025 - Engage/Reform -」におけるスペシャルセッションでは、トレジャーデータの共同創業者で取締役会長の芳川裕誠が、吉田選手とともに「日本人が世界でリーダーシップを発揮するために必要なことは」というテーマで対談を展開した。

今の自分があるのは、勝ち取った小さな信頼の積み重ね

吉田選手をお迎えするにあたって、今回のテーマについて、芳川は「日本はモノカルチャーの国と言った。お互いにコンテクストを共有しながら空気を読むことが自由にできる。しかし、国境を超えるとそうはいかない。そのなかで、どのように相手と相互理解を深めていくか、リーダーシップを発揮していくかというのが、今回のテーマ」と説明した。その上で、吉田選手は英語も堪能で世界各国でも日本代表でもキャプテンとして活躍してきたが、「最初からリーダーだったわけではない」と語った上で、吉田氏のこれまでの足跡を辿りながら、日本人が世界でリーダーシップを発揮するために必要なことを探るという今回の趣旨を説明した。
 
そして、登壇した吉田選手は、これまでの足跡を振り返りながら様々なエピソードを語った。吉田選手は、Jリーグ・名古屋グランパスでプロデビュー後、オランダ・エールディヴィジのVVVフェンローに移籍した。当時を振り返り、吉田選手は「当時はセンターバックのディフェンダーがヨーロッパに移籍するというのがない時代だった。『どんなもんなんだ?どれくらいできるんだ?』というプレッシャーはあったし、明らかにマイノリティーからのスタートだった」と語る。

能力を爆発させて大きなインパクトを生み出し派手なアピールをするのではなく、地道にしっかりと結果を出して、それをコツコツと積み重ねることによって信頼を獲得する。守備能力が求められるディフェンダーである吉田氏ならではという考え方だが、これはビジネスの世界でも通じるものがあるのではないか。
 
そして、吉田選手は2012年、サッカーの母国・イングランドのプレミアリーグを代表するチームのひとつ、サウサンプトンに移籍した。オランダでは降格争いに苦しむVVVフェンローから世界トップクラスのサッカーリーグへの移籍について、吉田選手は“飛び級の難しさ”を指摘する。
 
吉田選手によると、オランダの中堅クラブで活躍して同国のトップクラスのチームに移籍して、そこからイングランドをはじめ他国のトップリーグに移籍するというのが、外国人選手の王道パターンだそうだ。しかし吉田選手は2012年に開催されたロンドンオリンピックでの活躍が注目を浴び、“飛び級”のような形でイングランド移籍を果たす。そこに、難しさがあった。
 
「王道のプロセスを踏んでいない分、自力が足りなかったというのは、振り返ると正直ある。イギリスはオランダ以上に階級社会で、サッカーにもその風土がある。多少結果を出しても、『アジア人としてはいいプレイヤー』と評価される。今までよりハードルが高いマイノリティでスタートしなければならなかった」と吉田選手は当時を振り返る。
 
アジア人という理由で向けられる、いわゆる無意識バイアスに「毎日のように腹が立っていた」と語る吉田選手。しかし、オランダ時代と同じように地道に結果をコツコツと積み上げるというアプローチは変えられない。すると、4年目くらいから「チームのなかで自分に対する見方が変わってきた」(吉田選手)と言う。

リーダーは苦しいときこそ、真価が問われる 

その後、吉田選手はサウサンプトンでキャプテンに任命される。芳川はリーダーシップの在り方について聞いた。キャプテンといえども完璧な存在ではなく、調子が悪いときもあれば、ゲームで失敗することもある。そうしたときに、どのようなメンタリティでいたのか。
 
吉田選手は、芳川の問いに対して「リーダーは苦しいときこそ真価が問われる。自分が試合に出られないときや、パフォーマンスが良くないときにどのような行動をするのかが重要。チームメイトも、監督も、スタッフも自分の振る舞いを見ている」と語る。試合に出られなくても、腐らずに努力を続けて、次のチャンスを待つ。そして、そのチャンスで結果を出して信頼を取り戻したときに、それまでのプロセスが評価される。「チャンスで結果を出すことで、今まで積み重ねてきたことに対するリスペクトが少しずつ得られたのではないか」(吉田選手)。

ただ、このエピソードの背景には、日本人の仕事に対するプロフェッショナリズムの高さがあると吉田選手は指摘する。「そもそも他の選手やスタッフからリスペクトを得るという意味で、仕事に対するプロフェッショナリズムは、日本人選手の多くがヨーロッパの選手に比べたら圧倒的に高い。それを自然にやっていることが評価されたのではないか」(吉田選手)。
 
一方で、吉田選手はヨーロッパのトップチームでも、日本代表でも、そして現在在籍している米国MLSのLAギャラクシーでもキャプテンを務めている。文化の全く異なる国々でキャプテンを務めながら、キャプテンシーの考え方やアプローチの違いなどはあったのか。
 
吉田選手は、国によってやりやすさ・やりにくさがあるとした上で、最近苦労しているのは「国の違い」ではなく「世代の違い」だという。「いわゆるZ世代やそれよりも若い選手たちと接するときに苦労している。実はサッカーにもコンプライアンスの波は少しずつ押し寄せていて、選手を鼓舞するために少し突き放すような厳しい指摘をしようにもそれが言えなかったり、そもそも言ったとしても響かない。むしろ“一緒にやろうぜ”という声かけじゃないとダメ。時代とともにリーダーシップもアプローチもかえていかないといけない」と吉田選手は語った。
 
この吉田選手の指摘に、芳川は「ジェネレーションギャップの課題は日本の企業も直面している」と共感。その上で、さらに欧米のチームで他の選手とコミュニケーションするときに留意している点について聞いた。
 
吉田選手はこの問いに「基本的には0から10まで全ては言わないようにしている」と語る。特に若手選手の場合には最初の2、3点だけを伝えて、相手の反応を見ながらアプローチを考えているのだそうだ。「あまり言いすぎるのが良くない選手もいれば、ずっと気にかけたほうがいい選手もいる。世間話などを織り交ぜたほうが信頼を得られる場合もあれば、必要な情報だけをピンポイントで伝えたほうがいい場合もある。そこは選手の国籍によって違いが出る」(吉田選手)。

若いときから失敗を恐れたら、自分自身のキャパシティを小さくしてしまう

これまでも吉田選手の様々なエピソードを受けて、芳川は「完璧なリーダーはいない。様々な失敗をして、課題に直面して、それを克服して乗り越えて、結果を出していく姿をみんなが見て、信頼が寄せられていく。このようなリーダーシップの本質は、スポーツもビジネスも一緒なのではないか」と指摘。その上で、「失敗するのが怖いという人は少なくない。失敗したくないからチャレンジできず、前に進めないということもあるのではないか」と課題提起した。すると、吉田選手も芳川の意見に共感を寄せた上で次のように語った。

こうした吉田選手の意見を受けて、芳川は「ミスをした社員に責任を追及するのではなく、なぜミスが起きたのか、次にミスを繰り返さないようにするためにはどうしたらいいのかを考えることに時間を割く組織はいい組織なのではないか。吉田さんのアプローチは、まさにその通り」と共感。チームのメンバーに積極的にチャレンジを促し、たとえ失敗したとしてもそれを活かして組織の成長に繋げられることが、リーダーに求められる資質なのではないか。

二人の対話から見えてきたのは、単なる「失敗への寛容」ではなく、「失敗を資産に変える」という前向きな組織文化の重要性だ。個人の責任を問うことに終始せず、構造的な課題の解決に時間を割く姿勢こそが、停滞を打破する鍵となる。ミスを恐れて萎縮するのではなく、挑戦に伴うリスクを組織の糧として還元できるリーダーシップ。それこそが、変化の激しい現代においてチームを真の成長へと導くといえるだろう。