「カスハラ対策の義務化はいつから始まるのか」——この問いに、企業の総務・人事・法務部門の関心が急速に高まっています。結論から言えば、2026年10月1日です。改正労働施策総合推進法の施行により、カスタマーハラスメント(いわゆるカスハラ)への防止措置が、すべての事業主にとって法的な「義務」となります。施行まで、残された時間はおよそ3ヶ月。労働者を1人でも雇用していれば、企業規模を問わず対象となり、経過措置もありません。本記事では、法改正で何が変わるのか、企業は具体的に何を準備すべきなのか、そして対面接客や訪問営業といった「記録が残りにくい現場」でどう対応すべきかを整理します。
そもそもカスハラとは何か。厚生労働省は、顧客や取引先などがおこなう言動のうち「社会通念上許容される範囲を超えたもの」によって「労働者の就業環境が害されるもの」と定義しています。抽象的に聞こえるかもしれませんが、その負荷は数字にも表れています。
流通・サービス業を中心とする労働組合UAゼンセンが2024年に実施した実態調査(2024年1月18日〜3月18日、210組合・33,133件の有効回答)では、直近2年間でカスタマーハラスメントの被害を受けたと回答した人が15,508人、全体の46.8%にのぼりました。被害回数の内訳を見ると、1〜5回が63.9%を占める一方、16回以上と回答した人も10.2%に達しています。一部の従業員に負荷が集中している構図がうかがえます。
UAゼンセンは、2020年の前回調査と比較して被害割合はやや減少傾向にあると分析しています(日本経済新聞も2024年6月に報道)。ただし、被害経験者が依然として半数近くにのぼるという水準そのものは変わっていません。社会的な機運の高まりや企業労使の自主的な取り組みが一定の効果を上げてきた一方、それだけでは高止まりする被害を十分には押し下げきれなかった、とも読み取れます。この「自主的な取り組みの限界」こそが、今回すべての事業主を対象とする法的義務化に踏み切った背景にあると言えるでしょう。
この流れを法制度として後押ししたのが、全国に先駆けた東京都の動きです。東京都は2025年4月1日、全国初となるカスタマー・ハラスメント防止条例を施行し、「何人もあらゆる場においてカスタマーハラスメントを行ってはならない」(第4条)と明記しました(指針は2024年12月19日策定)。ただし罰則規定は設けられていません。
そして、より広範な影響を持つのが国の法改正です。2025年6月11日に公布された改正労働施策総合推進法が、2026年10月1日に施行されます。ここで最も重要な変化は、カスタマーハラスメント防止措置が事業主の「法的義務」になるという点です。対象は労働者を1人でも雇用するすべての事業主で、中小企業や個人事業主も含まれ、経過措置はありません。都道府県条例が理念を示す段階だったのに対し、国の法律は全事業主に具体的な対応を求める段階へと踏み込んだことになります。
厚生労働省の指針が事業主に求める措置は、大きく4つの柱で構成されます。
これら4つに共通して欠かせないのが「何が起きたか」を正確に把握することです。ところが、ここで多くの企業がつまずきます。コールセンターの通話であれば録音が標準的に残りますが、店舗の窓口、訪問営業、対面サービスの現場では、会話がその場限りで消えてしまいます。従業員の記憶と主観的なメモに頼らざるを得ず、事実確認の段階で「言った・言わない」の水掛け論に陥りやすい。これが、対面接客・訪問営業の現場に特有の「記録の空白」です。相談体制を整えても、肝心の証拠が残らなければ、事後対応も抑止措置も機能しにくくなります。
この「記録の空白」を埋める手段として注目されるのが、対面の会話をそのまま記録・解析する仕組みです。Treasure AI Voiceは、PLAUDのAIボイスレコーダーで対面や電話の会話を録音し、AIで解析するプロダクトで、次のような特徴を持ちます。
義務化に向けた準備は、次のような手順で進めると実務に落とし込みやすくなります。
2026年10月1日の改正労働施策総合推進法の施行により、カスハラ対策は「取り組んだほうがよいこと」から「すべての事業主が講ずべき義務」へと変わります。求められる4つの措置はいずれも、正確な事実の記録という土台の上に成り立ちます。とりわけ対面接客や訪問営業の現場では、その土台となる「記録」をどう確保するかが、対応の実効性を大きく左右します。義務化を単なるコンプライアンス対応で終わらせず、従業員が安心して働ける現場づくりへとつなげるために、記録の空白を埋める仕組みの検討を、今のうちから進めておくことをおすすめします。対面の会話を記録・解析し、顧客データ基盤とも連携できる仕組みの詳細は、Treasure AI Voice の製品ページをご覧ください。