株式会社JTB

データ基盤がなければ「マーケットイン」への発想の転換は実現しなかった

株式会社JTB
nWeb販売部 戦略担当部長 Data Science Central統括
n福田 晃仁氏 Web販売部 データサイエンス課長 Data Science Central 副統括
n山上 亜紀氏

株式会社JTB nWeb販売部 戦略担当部長 Data Science Central統括
福田 晃仁氏

Web販売部 データサイエンス課長 Data Science Central 副統括
山上 亜紀氏

株式会社JTBでは、20年以上にわたって「宿泊」などのインターネット販売を展開している。そして2018年、この事業における課題を解決すべく、同社ではTreasure Data CDPを導入した。CVR150%アップも達成したその取り組みとは?


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ミッションは「データドリブン」

1912年創立のジャパン・ツーリスト・ビューローを母体とする株式会社JTBは、長年にわたり日本の旅行業界を牽引し続けている。同社はインターネットの活用にも、業界に先駆けて取り組んだ。1998年にはインターネット上で「宿泊」の販売を本格的にスタート。既に20年以上の歴史を持っている。

しかし、近年の旅行業界では、テクノロジー企業を始めとする様々なプレイヤーの台頭が本格化している。そこで、JTBとしてさらなるデジタル活用を実現するため、2017年に「データドリブン」をミッションとした新たなプロジェクトが発足した。そのプロジェクトを担当したWeb販売部の山上亜紀氏は、当時の課題感について次のように説明する。

「『宿泊』のインターネット販売を開始した後、私たちは販売する商品を『海外ツアー』『国内ツアー』と追加していきました。ただ、それらの販売データを上手く活用できていませんでした。『宿泊やツアーなど全取扱商品を合算した、インターネット販売全体の昨日の売上』をすぐに把握することすらできていなかったんです。それは、『宿泊』や『海外ツアー』など商品ごとに予約のシステムが全く異なるものだったからです。それぞれの販売データの『型』も統一されていない状況でした」(山上氏)

発注の2日前にDB製品をキャンセルした理由

販売データがサイロ化している以外にも、大きな課題があった。社内にデータ活用に関する専門性を持った人材が不足していたのだ。「当時の私たちは『どのくらいインターネット販売で売上があったのか』をベースに、Excel上で表やグラフを作ることが『データ分析』だと捉えていました。当時、その考えを元にソリューションの選定を進めていたのです」(山上氏)

株式会社JTB 山上氏

2018年4月、間もなくある製品の導入が決定する直前というタイミングで、データ活用への高い知見を持つ福田晃仁氏が戦略部長としてWeb販売部に参画した。

「導入しようとしていたのは、帳票系のDBでした。それは端的にいえば『カテゴリー違い』であり、JTBがやりたいことを実現するのは不向きなDB製品だったんです。当時の社内では、分析と施策からDB設計をバックキャストできる人材がいませんでした。私は入社して3日後に、その製品の発注を見送るための手続きを取りました。それは発注書を提出する2日前のことでした」(福田氏)

トレジャーデータへ変更した3つの理由

その製品の発注を見送ると同時に、福田氏は別製品を導入する手続きを即座に開始した。それがTreasure Data CDPだ。福田氏がTreasure Data CDPを選択した理由は、大きく3つあるという。

まずは、トレジャーデータが独立系ベンダーである点だ。将来的に様々なツールの活用を考える福田氏は、ベンダーロックインのリスクがないことを高く評価した。次は、Treasure Data CDPに、外部の様々なツールと接続するためのコネクタが豊富に用意されている点。インテグレーションを必要とせず、柔軟に外部ツールと接続できるのはTreasure Data CDPの大きな特徴だ。

最後のポイントは「西海岸のスピード感を知っていること」だと福田氏は説明する。

「国内大手のITベンダーの仕事の進め方って、どうしても時間がかかってしまうんです。私は短期間での構築を実現したかったので、トレジャーデータ社の『スピード感』に期待を持っていました。実は、Treasure Data CDPを検討する以前の計画を聞いたところ、2年後の本格稼働を想定していたんです。『4カ月から半年で要件定義書を作って、1年後にフェーズ1のテストアップ』といったイメージです。私は3カ月タームで仕事がしたかったので、最初の3カ月でプロトタイプのDBを構築しきることに決めました。そして、もちろんプライオリティはつけましたが、4カ月後には実運用まで開始できたんです」(福田氏)

「以前はグループ内のSEに頼み、データベースへカラムをひとつ追加するだけでも、1週間かかるのが当たり前の感覚でした。ですからこれほど短期間で構築できるとは、とても驚きましたね」(山上氏)

「出張女子」への施策はCVR150%アップを達成!

Treasure Data CDPの導入を進めるとともに、JTBでは社内の組織体制の変革も行った。2018年4月には新たに「データサイエンスセントラル」という組織が設置されたのだ。データサイエンスセントラルは、大きく3つのチームから成り立つ。Treasure Data CDPを活用して、統合データ基盤を構築するチーム。この基盤上のデータから顧客分析を行うチーム。そして、分析されたデータから実際にマーケティング施策をプランニングするチームの3つだ。

もちろん、この施策を行った結果は再びTreasure Data CDP上の基盤に集約され、一連のサイクルが回り続ける。これによりミッションであるデータドリブンを実現できると考えているのだ。データサイエンスセントラルでは、2018年夏には分析設計を開始し、Treasure Data CDPの導入からわずか半年後の10月には顧客分析が開始された。デジタル広告の運用のために、JTBが従来まで「分析」していたのは、年齢や性別、購買金額などに過ぎなかったが、大きな変化は「顧客の文脈」を分析できるようになったことだ。

例えば、同社では「出張」については男性を対象とした施策しか実施をしていなかった。ところが、データを分析すると女性の出張は、男性のそれにくらべ、単価が約10%高いことがわかった。さらにどのような施設に宿泊しているのかデータを分析すると、男性が「雨に濡れない」「駅から5分」「コンビニに近い」といった機能購買をしているのに対して、女性は「アメニティが充実している」「女性専用フロアがある」など、いわゆるサービス購買をしていることが読み取れた。分析チームは彼女たちを「出張女子」と名付け、知見をプランニングチームに渡す。プランニングチームはそれに合わせたコミュニケーションプランとメディアプランを策定し、施策を実施した。すると、コンバージョン率は150%の上昇を記録したのだ。福田氏は「お客様の『文脈』をつかむことで、コミュニケーションを改善できた最初の瞬間でした」と振り返る。

株式会社JTB 福田氏

「プロダクトアウト」から「マーケットイン」への転換

北海道でも特徴的な顧客が見つかった。「11月に北海道で大人のグループ旅行が多いことがデータからわかりました。なぜなのかを探ってみると、『観楓会』という北海道の慣習の影響だったんです。元々は、文字通り楓を鑑賞する『お花見』のような慣習だったのですが、現在は『観楓会』という名前で社員旅行をするのだそうです。そこで仕入部門から宿泊施設に呼びかけてもらい、宿泊プランのタイトルに『観楓会』と入った商品をHPやメルマガで告知するという企画を行ったんです」(山上氏)

その他にも、ステーションホテルにしか宿泊しない「雨と地図に弱い中高年女性グループ」、都内で平日に一人で5万円以上の施設に宿泊する「東京貴族」など、ユニークな名前を付けられたセグメントは、これまでに約260も「発見」された。

最後に福田氏は今後の展望を語った。

「データサイエンスセントラルの基盤チームが本年度に目指すのは、店舗やコールセンターも含めたグループ内のデータ統合と活用です。顧客分析チームは、その分析結果をJTBの幅広い範囲にフィードバックしていきます。そして、プランニング、マーケティング施策のチームでは、あらゆるチャネルを統合した施策のオーケストレーションを目指します。この取り組みを続けていくと、お客様の特徴を立体的に掴むことができるようになるでしょう。私たちJTBの大きな課題は、自分たちの顧客はだれなのかを『顧客の文脈でわかっていない』点です。データサイエンスセントラルでは、特徴ごとの顧客構造を収益構造と対照し、どのようなお客様にどのような価値を提供すればいいのかを導いていきます。我々はデータを解釈し、JTBというブランドの体験構築に昇華させていきたいと考えています。」

株式会社JTB 山上氏、福田氏(左から) 福田 晃仁ふくだ あきひと(右)

株式会社JTB Web販売部 戦略担当部長 Data Science Central統括

JTB Web販売部 主幹 戦略担当部長としてデータドリブンマーケティング戦略を統括。これまでのキャリアで培った、総合代理店/ITベンダー/事業会社の3つの視点によって、日本のデータマーケティング業界をリードしている

山上 亜紀やまがみ あき(左)

株式会社JTB Web販売部 データサイエンス課長 Data Science Central 副統括

新卒でJTBに入社後、添乗系業務、総務省への出向など、さまざまな業務を経験。インターネット黎明期から、JTBのオンラインビジネスに携わる。データドリブンを実現するための戦略組織 「データサイエンスセントラル」 の副統括として各種戦略設計や、予算管理、統合マーケ基盤の導入PMOなどを担当。

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