LOTTE C&F VIETNAM

顧客理解とAIエージェントがもたらす、ロッテグループの実践法とは?

キム・ギョンドン氏
マーケティングマネージャー
LOTTE C&F VIETNAM

トレジャーAIは世界75カ国に事業展開し、パートナーとともに多くのエンタープライズ企業へソリューションを提供している。今回は、ロッテグループの一員であるLOTTE C&F VIETNAMでマーケティングマネージャーを務めるキム・ギョンドン氏に、Treasure AIの活用事例を聞いた。
アジアで活躍する同氏の知見から、データとAIを活用した次世代マーケティングの輪郭が見えてきた。


目次

グループのシナジーを生むデータ統合基盤の構築

ロッテグループでは、グループ全体のデータをTreasure AIへと統合し、全般的なシナジー創出を推進している。顧客体験(CX)の向上や、LOTTE C&FのBNPL事業におけるデータ活用など、ロッテエコシステム内で優れた体験を継続的に蓄積・管理できる強固なデータ基盤を確立した。

この統合された顧客プロファイルは、BIツールによって可視化され、属性や行動データに応じた柔軟なセグメンテーション(顧客細分化)や、自動化された顧客エンゲージメントの創出、さらにはカスタマージャーニーの最適化に寄与している。

高度なデータ管理と効率的な運用がすでに日常化している同社だからこそ、次なるテクノロジーの恩恵をフルに享受できる。ここからは、この強固なデータエコシステムを足がかりに、マーケティングの常識を塗り替える『スーパーエージェント』の真価と、それがもたらす自律型の未来について迫る。

AIエージェントが実現する次世代のマーケティング

パク氏はAIエージェントの全体像を、次のように語る。

「例えば、パーソナライゼーション向け、顧客エンゲージメント向けなど、目的別に複数のスーパーエージェントを活用することで、マーケターは自然言語で指示を出すだけで分析から施策の実行までできるようになる」。

パク氏はデモ画面を示し、「Marketing Super Agent」の具体的な活用イメージを紹介していった。

ユーザーが「どのようなエージェントが利用できるのか」と質問すると、利用可能なスモールエージェントの一覧が表示される。データベースを指定し、「このデータを基に分析してほしい」と依頼すると、スーパーエージェントが顧客データを横断的に分析し、内容を要約して提示する。

ホテルの顧客を想定したサンプルデータを用いて、「5月に訪問する顧客のセグメントを分析してほしい」と指示すると、スーパーエージェントがタスクを分解し、複数の専門エージェントへ処理を振り分けたうえで、その結果を表示した。

続いて「会員ランク別に、5月の予約率と顧客単価を分析してほしい」と依頼すると、保有データを分析してインサイトを抽出。過去のマーケティング施策データもあわせて分析し、施策立案に向けた示唆を提示した。

さらに「2022年以降のマーケティングキャンペーン効果を可視化してほしい」と指示すると、AIが保有データを分析し、マーケティング施策の効果をグラフ化。CAC(顧客獲得費用)やLTV(顧客生涯価値)を、素早く分析・可視化する。

こうした機能により、SQLの専門スキルを持たないマーケターでも、簡単に顧客データを扱い、分析できるようになった。さらにメールのコンテンツ作成など、分析に応じたクリエイティブ生成もAIで行える。文脈や必要なコンテンツを指定すると、HTML形式でメールを出力する。画像の生成も可能だ。

Webパーソナライゼーションやポップアップ表示などにも活用できる。チャットボットではAPI連携を通じて、AIエージェントが生成したメッセージをリアルタイムに表示。メッセージアプリとも連携するなど、配信まで含めた施策を一連で実行可能だ。

最後にパク氏は、スモールエージェントとスーパーエージェントを活用したマーケティングの効率化を、「3段階のプロセス」として整理する。

まず、スーパーエージェントをどのような目的で活用するのかを定義する「戦略設計」が必要だ。次に、マーケターが実際に行っている業務を整理・マッピングし、「どのエージェントへ、どのタスクを割り振るのか」という全体設計を行う。最後に、運用結果を基に継続的な改善を行い、全体のプロセスを最適化していく。

CDPとAIエージェントでデータのエコシステムをつくる

続いて、LOTTE C&F VIETNAMのキム氏が、ユーザーとしてTreasure AIの活用体験を語ってくれた。

キム氏は、これまでロッテキャピタルでCRMやマーケティング、顧客分析、アプリ/Webリニューアルなどを担当。現在はベトナム市場でBNPL(Buy Now Pay Later)事業を推進するため、データドリブンマーケティングに取り組んでいる。

同社では2025年10〜11月ごろにTreasure AI上でCDP(Treasure Data)の構築を完了している。キム氏は、導入の背景から、現在のマーケティングおよびAIエージェント活用までを、詳しく紹介した。

現在、ベトナムにはロッテマートやロッテモール、ロッテシネマ、百貨店など、多くのロッテグループ企業が進出している。一方で、顧客データや顧客管理は各社ごとに行われていたため、グループ横断でシナジーを創出することが難しい状況だったという。

そこで、グループ全体で顧客データを活用できる環境構築を目指し、Treasure AIの導入に踏み切った。各社に分散していたデータを統合することで、顧客ごとの統合プロファイルを構築する狙い。現在は、統合されたプロファイルを基に顧客特性やセグメントを分析し、リアルタイムマーケティングやプロモーションの高度化を進めている。

キム氏は、「顧客コミュニケーションの最適化や顧客体験向上を通じて、取引件数の拡大やデータ活用高度化につなげる、好循環型のデータエコシステムを構築したい」と語る。具体的な要素として、「メールマーケティング」「デジタルマーケティング」「AIエージェントを活用した顧客分析」の3つのテーマを解説した。

キム氏は、メールマーケティングについて「現在は以前ほど活用されなくなっている」としながらも、エンドツーエンドでメール施策を実行できるTreasure AIの機能を評価する。追加コストをかけずに、さまざまなテストや施策を実施すると、「想定以上に顧客の開封率や反応が良かった」という。 

Treasure AIではデータ分析から戦略立案、顧客セグメンテーション、AIエージェントによるメールコンテンツ生成、配信、効果測定までを一貫して実施できる。「AIを活用することで、多くの作業を手作業なしで効率的に進められた」とキム氏。実際にアプリインストール数や購買増加などの成果にもつながった。

一方でキム氏は、「成果指標以上に価値を感じたのは、顧客と継続的にコミュニケーションできるようになったことだ」と強調する。イベントや告知発生時に、顧客と直接やりとりできる環境を評価した。

デジタルマーケティング領域では、GoogleやMeta、TikTokなどの広告プラットフォームと直接連携できる点を評価。顧客データをセグメントごとに連携し、そのまま広告配信へ活用できるため、施策運用が効率化されたという。

広告配信結果はTreasure AI上で一元的にトラッキングできる。「どの広告が効果的だったのか、どのコンテンツが成果につながったのかを一画面で確認でき、成果管理が容易になった」と手応えを述べた。

データ分析に慣れていないマーケターでも、自然言語による指示だけで、高度な分析結果を取得できる。広告運用が改善され、2026年1〜2月にはアプリのCPI(インストール単価)が50%以上改善した。

「代理店経由の広告運用ではリアルタイムの対応が難しかったが、自社運用へ切り替えたことで、コンテンツ制作やリアルタイム施策を迅速に実行できるようになった」(キム氏)。

AIエージェントの活用では、ターゲティング施策に関するインサイト取得が容易になった。「〇〇の顧客には、どのようなターゲティングが効果的か」と質問するだけで、示唆を得られ、施策立案を効率化できたという。

目的に応じたダッシュボードを自動生成し、データを可視化することも可能だ。キム氏は、「質問内容をより具体化するほど、分析結果の精度も高まった」と手応えを語る。

さらに、生成AI活用における重要な論点として、顧客データのセキュリティにも言及した。外部AIサービスへ顧客データを送信することに不安がある一方で、「Treasure AIでは、内部環境でデータを処理しAI分析を行うため、安心して利用できる」と評価した。

このように、AIの活用でデータ分析の時間が大幅に短縮されるのは間違いない。そのうえでキム氏は、「重要なのは正確性だ」と強調する。

同社ではTreasure AI構築完了後、約2〜3カ月をかけてAIエージェントによる分析結果を検証した。Treasure Data上でSQL/Pythonスクリプトを活用し、ローデータを抽出しながら、AIの分析プロセスと出力結果の正確性を確認したという。

キム氏は、「AIが出力した分析結果をすべて検証したが、非常に正確だった」と太鼓判を押す。現在では、特別な検証プロセスを挟まずに活用できるレベルに至っているという。最終的には、顧客データをTreasure AI上で一元的に活用し、リアルタイムでのマーケティングの自動化、および顧客対応の実現を目指している。

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