Treasure AIのCustomer Reliability Engineer(CRE)は、お客様から寄せられる技術的な問い合わせに対し、プロダクトの動作やソースコード、ログを深く調査し、問題解決まで伴走する仕事です。
複雑な事象になると、確認すべきジョブが数十個に及び、膨大なログの照合が必要になることもあります。
こうした高度な調査業務にいち早くAIを導入し、社内向けサポートツールの開発や調査フローの標準化を推し進めているのが、CREチームの大村さんです。現在は、チケット内容の解析からログの収集、回答ドラフトの作成までをAIが支援する仕組みの構築に取り組んでいます。
「日々の問い合わせ対応」という枠を超え、エンジニアリングの力で業務そのものをハックしていく。今回は大村さんに、多彩なキャリアからTreasure AIへ入社した経緯や、コードを追うCREの面白さ、そしてAIによって進化しつつある次世代のサポート業務について話を聞きました。
ソフトウェア開発から研究開発まで。多彩なキャリアを経てTreasure AIへ
これまでのご経歴と、Treasure AIへ入社したきっかけを教えてください。
2020年4月にTreasure AIへ入社する前は、個人事業主として幅広い仕事をしていました。通常のソフトウェア開発はもちろん、プログラミングセミナーの講師を務めたり、大学や企業と連携して研究開発の支援を行ったりもしていました。
個人事業主から会社員への転身は大きなライフシフトでしたが、Treasure AIのカルチャーは自分にとても合っていました。各々がプロフェッショナルとして尊重され、パフォーマンスを発揮できれば自分の裁量で自由に働ける環境があるため、長く働き続けられると感じています。
ちなみに、Treasure AIに入社した直接のきっかけは妻なんです。妻が社内のメンバーと知り合いだったご縁から、入社することになりました。
AIと自作ツールで、日々の問い合わせ対応をハックする
現在はどのような業務を担当されているのでしょうか。
現在はStaff Customer Reliability Engineerとして、基本的には、お客様からの問い合わせに対する調査・回答がメインです。その合間に、新機能リリースのレビューや他チームからの技術的な相談にも対応しています。
また最近は、CREチームが内部で使うサポートツールの開発にかなり力を入れています。
問い合わせの調査では、数十件のログを目視で比較したり、複雑なワークフローの中で数十個以上の関連ジョブを一つずつ確認したりする泥臭い作業が発生します。
こうした情報収集や比較にかかる時間を減らすために開発しているのが、問い合わせ対応を支援するAIツールです。
サポートチケットのIDを入力すると、AIがチケットの内容を取得し、関連するジョブやログを調査します。さらに、過去の類似チケットや社内のナレッジベース、ドキュメントなども検索し、調査に必要な情報を集めて整理してくれます。
そのために、AIが問い合わせ内容やログ、社内の各種情報源にアクセスできるよう、複数のコマンドやスキルを用意しています。AIはそれらを組み合わせながら調査を進め、調査結果だけでなく、お客様への回答やエンジニアへのエスカレーションのドラフトまで作成します。
もちろん、AIの出力をそのまま使うわけではありません。調査の方向性や根拠、回答内容が適切かどうかは、最後にCREが確認します。
人間がこれまで目視で行っていた情報収集やログの確認をAIに任せることで、CREは調査結果のレビューや、お客様への説明など、より重要な判断に時間を使えるようになっています。
小さな「不便」を起点に、AIの対応領域を拡張していく
そもそも、AIを活用したツール開発を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
最初は私も、「AIにそこまでの調査はできないだろう」と思っていました。転機になったのは、Claude Codeのように「AI自身がコマンドを実行して、システムから必要な情報を取りに行く」仕組みを知ったことです。
とはいえ、最初から大掛かりなシステムを作ったわけではありません。最初は問い合わせ画面のテキストをコピーして、AIのチャット画面に貼り付けて処理させていました。しかし、何度も繰り返すうちにそれ自体が面倒になってきました(笑)。
そこで、「チケット番号を渡すだけで、AIが問い合わせ内容を引いてくればいい」といったコマンドを作りました。そこから、「ついでにログも取ってこよう」「過去のナレッジも検索させよう」と、自分自身が面倒だと感じる作業を一つずつプログラム化し、AIの機能として追加していったんです。
AIが実行できる「道具(コマンド)」を用意すれば、あとはAIがそれらを自律的に組み合わせて答えを出してくれます。こうした小さな自動化の積み重ねが、現在の支援システムへと繋がっています。
コードを追い、謎を解くデバッグの面白さと、コミュニケーションの難しさ
CREという仕事において、エンジニアリング的な面白さを感じるのはどんな瞬間ですか?
一番面白いのは、やはり「デバッグ」をしているときですね。
Treasure AIのCREはプロダクトのソースコードに直接アクセスできるため、表面的な仕様だけでなく、実際にコードを追いながらシステムの裏側の動作を特定することができます。
膨大なログを解析し、複数のジョブを比較しながら「なぜこの挙動になったのか」という根本原因(Root Cause)を突き止めていく。その過程は、まるで謎解きのようなエンジニアリングの楽しさがあります。最近はAIのサポートのおかげで、ソースコードを追う作業自体もかなり効率化されました。
一方で難しさを感じるのは、お客様とのコミュニケーションです。
お客様やパートナー企業様によって、お持ちの技術的背景は異なります。私たちが突き止めた技術的な事象をそのまま伝えるのではなく、相手のコンテキストに合わせて、正確かつ分かりやすい言葉に翻訳して伝えなければなりません。
どうしても説明が難しい場合は、より顧客の立場に近い他部署のメンバーに協力してもらうこともあります。技術的な本質を共有しつつ、顧客コミュニケーションのプロフェッショナルと連携して解決にあたれるのは非常に心強い環境です。
自律して動き、インシデント発生時には「ひとつのチーム」になる
CREチームのカルチャーや雰囲気について教えてください。
普段はメンバー一人ひとりが、自分の裁量でかなり自由に動いているチームです。
しかし、大規模なインシデントなどチーム全体で対応すべき事態が発生すると、即座に「ひとつのチーム」として連携し始めます。
例えば、広範囲に影響が出る事象が発生した際は、瞬時に「エンジニアチームへエスカレーションして原因究明に動く人」「お客様へのアナウンスやコミュニケーションを担う人」「その他の通常問い合わせの対応をカバーする人」といった役割分担が自然と決まり、一丸となって事態の収拾にあたります。
また、情報が非常にオープンなのも特徴です。Slack上では様々なチームの議論やトラブルシューティングの過程が可視化されており、他のメンバーの対応プロセスから新しい知識を得ることができます。困っている人がいれば誰かがすぐに助け舟を出してくれる、非常に心理的安全性の高いチームだと思います。
個人のナレッジをシステムに組み込み、チーム全体の「調査標準化」へ
今後、Treasure AIで挑戦していきたいことはありますか?
AIによる業務自動化の領域を、さらに拡張してチーム全体へ定着させることです。
現在は情報収集やドラフト作成といった業務をAIに任せていますが、今後はCREのあらゆる業務に対応できるよう、AIが使える「スキル」のバリエーションを増やしていきたいですね。
すでにベースとなるツールの基盤はできたので、これからは私だけでなく、チームメンバー全員が自分の業務に合わせたAIスキルを自ら設定し、追加していける世界を目指しています。AIへの指示は自然言語でできるため、高度なプログラミング知識がなくても、業務フローをAI化することが可能です。
過去の高度なトラブルシューティングの経験や、個人の頭の中にしかなかった調査ノウハウを「AIのスキル」として実装できれば、それはチーム全体の共有資産になります。属人化しがちな調査業務をシステムによって標準化し、CREチーム全体のパフォーマンスをさらに一段階引き上げていきたいと考えています。
自分で考え、「まずは手を動かして作ってみる」エンジニアへ
最後に、Treasure AIのCREに興味を持っている方へメッセージをお願いします。
「どう動いているのか」を自分で調べ、まずは手を動かしてやってみようと思える方には、間違いなくマッチする環境です。
Treasure AIのCREは、単なるマニュアル通りのサポートではありません。プロダクトの深いコードレベルまで潜り込み、「なぜこうなるのか」を技術的にとことん追求できる面白さがあります。
また、私が進めているようなAIを使ったツール開発や業務改善も、最初から完璧なものではありません。「この作業、毎回面倒だな」という日常の小さな課題から出発し、プロトタイプを作って試行錯誤を繰り返すことで、結果的にチームの働き方を変える仕組みへと成長しました。
決められたレールの上を走るだけでなく、自分で課題を見つけ、プログラムを書き、周りを巻き込みながら解決していく。そんな「エンジニアリングでサポートを進化させる」働き方にワクワクする方と、ぜひ一緒に働きたいですね。