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2021/05/28

ユニリーバがD2C事業に踏み切った理由 〜パーソナライズシャンプーブランド「Laborica」〜

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ユニリーバがD2C事業に踏み切った理由 〜パーソナライズシャンプーブランド「Laborica」〜

世界最大級の消費財メーカー、ユニリーバの日本法人であるユニリーバ・ジャパンが日本発かつ日本初の自社EC販売による、パーソナライズシャンプーブランド「Laborica (ラボリカ)」を立ち上げた。

その背景と理由、事業の現状について「ユニリーバの日本発&日本初 D2Cブランド Laboricaに迫る」と題したセッションで、同社のシニアR&Dマネジャー・鳥川 行雄 氏が語った。
聞き手は、株式会社ADKマーケティング・ソリューションズのDDM戦略デザインセンター・中野 琢 氏が務めた。

鳥川 行雄氏
鳥川 行雄氏

ユニリーバ・ジャパン・サービス株式会社
シニア R&Dマネジャー

2006年ユニリーバ・ジャパンに入社。入社後シャンプーやボディソープなどの、粧業品の開発に従事。その後、バンコクオフィス、上海オフィスにてリージョナル・グローバルプロジェクトに関わり、2018年より現職。2019年からは、ユニリーバ・ジャパン初のパーソナライズシャンプーブランド「Laborica」の責任者を兼任。
モデレーター:中野 琢氏
モデレーター:中野 琢氏

株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ
DDM戦略デザインセンター

モバイルコンテンツプロバイダーのマーケティング部門を経て、2012年にADK入社。TVとデジタルの統合メディアプランニング、デジタルメディアの活用戦略の策定、アドベリフィケーション、データ活用戦略の策定と推進などに携わる。

パーソナライズシャンプーブランド「Laborica」の誕生

Lux、Magnum、Dove、Liptonなど数多くのブランドを、アメリカ大陸、ヨーロッパ、アジア、アフリカ地域で展開する世界最大級の消費財メーカー、ユニリーバ。近年は、アジアとアフリカ地域での売り上げを伸ばしている。

ビジネスを通じて社会の問題を解決するという創業者の使命感は、ユニリーバの企業文化の一部として変わることなく受け継がれており、現在は“Make Cleanliness Commonplace”から“Make Sustainable Living Commonplace”と進化させ、ビジネスを展開している。

ユニリーバ・ジャパン(以下、ユニリーバ)では、2019年7月にパーソナライズシャンプーブランド「Laborica (ラボリカ)」事業をスタート。「Laborica」専用のWebサイトを通じて、年齢、体質、髪質、好みに合わせて自分に合ったヘアケアを求めるすべての方に、パーソナライズしたシャンプーとコンディショナーを提供している。

シャンプーとコンディショナーのパーソナライズは、毛髪診断士®*の監修のもと作成した毛髪診断をベースに行う。髪診断は、髪の毛の長さ、太さ、量、カラーリングの頻度、うねり、頭皮の状態など30に及ぶ設問から構成される。

回答に基づき、2万1,600通りの中からシャンプーとコンディショナーを処方。処方されたシャンプーとコンディショナーは、香りの量などをさらにカスタマイズすることもできる。シャンプー、コンディショナーともに容量は250mlで価格は単品購入で6,980円だ(税・送料込み)。

*「毛髪診断士®」とは、日本毛髪科学協会の登録商標です

ひとりひとりの問題・課題を解決できないメガブランドの宿命

ユニリーバが、D2C事業に踏み切った背景には理由がある。

グローバルなメガブランドを多数展開するユニリーバのビジネスモデルは、お客様が求めやすい商品を大量に生産し、卸や小売りを通じて販売するというもの。それ故、お客様ひとりひとりの問題や課題に寄り添うことが難しく、長年にわたり、それを実現したいという思いを抱いていた。こうした思いが形となり誕生したのが、パーソナライズシャンプーブランド「Laborica」だ。

商品をパーソナライズするためには、お客様の髪の悩みやなりたい髪について知る必要がある。「Laborica」の責任者を務める鳥川氏は、「お客様と一対一で対話し、受注生産を可能にするための仕組みを考えた結果、D2Cにたどり着いた」と語る。

鳥川氏は、2018年からスタートした社内ベンチャー制度でパーソナライズシャンプー事業を提案。その第一弾企画として承認された。

実は、鳥川氏は社内ベンチャー制度の立ち上げにも深く関与している。社会の問題やマーケット状況などユニリーバを取り巻く環境は、変化のスピードが早い。変化の兆しをとらえてビジネスを展開していくには、メガブランド、大量生産という既存の事業だけでは解決できなくなっている現状がある。より早く物事を進めていく仕組みの必要性を感じていた鳥川氏は、社内ベンチャー制度を活用し、その第1号企画が「Laborica」となったのだ。

既存事業のノウハウをD2C事業に生かす

改めて、既存事業とD2C事業の違いを「マーケティングの4P」のフレームワークにまとめた。

例えば、プロダクトでいうと、既存事業は大量生産、グローバルブランドという大きなモデル。一方、「Laborica」は受注生産、日本発のブランドで、価格帯も10倍近く異なる。

既存の事業と対照的なD2C事業であるが、既存事業を通じて得られた知見やお客様とのコミュニケーションに関する膨大なデータ、そしてユニリーバが誇るモノづくりのノウハウを生かすことができた。パーソナライズシャンプーを作る上で、研究開発部隊を社内に持つメリットは大きいと言えよう。

加えて、人々が清潔に暮らせる環境を作ることを使命に創業したユニリーバのビジネスの起点にあるのは人、つまりお客様だ。既存事業で培ったお客様視点は、D2C事業を行う上で欠くことができない。

「お客様がLaboricaを利用する際にあったらいいと思う機能を実現するとともに、こうあってほしいと思うであろうことは必ず守るよう努めている。例えば、LTVを伸ばすために、あえて定期コースを解約しづらい設計にするという考え方もあるかもしれないが、それはお客様視点とは言えない。定期コースの停止やお届けスパンの変更はマイページから簡単に操作できるようWebサイトを設計している」と、鳥川氏は語る。

ユニリーバにとってのD2C事業 3つのメリット

既存事業とは異なるD2C事業ならではのメリットは、次の通りだ。

まず、お客様のプロファイルや生の声(ご意見・ご指摘など)をデータとして収集、データベース化し保有することが可能だ。これにより、お客様理解が深まると期待している。

次に、パーソナライゼーションだ。従来は、調査によって髪の悩みを収集しニーズを特定していた。現在は、髪診断を通じて、お客様から直接、髪の悩みを収集でき、お客様ひとりひとりの髪の悩み、なりたい髪を知り、その人に合ったシャンプーとコンディショナーを提供することができるようになった。

さらに、既存事業のビジネスモデルでは難しかった、販売価格のコントロールも可能となった。単品購入と定期購入、セット購入との価格差、ブラックフライデーなどの値引き幅などを事業計画に沿って設定することができる。価格設定を含めたメディア施策(キャンペーン)との連動も容易になった。

ECプラットフォームという直接的な顧客接点を得たことで柔軟な価格決定ができるようになった点は、事業の成長や利益創出につながっており、D2C事業の大きなメリットと言えよう。

「Laborica」で学んだことを次の製品開発に生かす

既存の事業は、大量生産によって多くの在庫を持って販売していく形態のため、PDCAサイクルでいうところのPlanの作業に費やす時間とコストが大きい。一方でD2Cは、いかにPlanを早く行い、優先事項をクリアにし、アクションを経てフィードバックをもらって改善していくプロセスが重要と考えている。

「Laboricaの製品とサービスは、まだまだ改善の余地がある。製品を一度使ったら終わりではなく、2回、3回と注文を繰り返すことで、より自分の好みに近づけられることがカスタマイズシャンプーの魅力なので、それをもっとお客様に伝えていきたい」と語る鳥川氏。今後は、「Laborica」の魅力をより一層、アピールしていく姿勢を見せる。

同時に、「Laborica」で学んだことの横展開も図る構えだ。D2Cという仕組みを通して会社が学べることは大きいと認識する鳥川氏は、「Laborica」の髪診断で蓄積した髪の悩みやなりたい髪に関する生きた情報を、ほかの製品開発にも生かせるよう、積極的に取り組んでいくという。

D2C事業をスタートする際には、既存事業で培ったノウハウを「Laborica」で生かした。これとは逆に、「Laborica」で培ったノウハウを今後の新製品開発に生かす。既存事業と新規事業とが互いにメリットを享受し合う形でビジネスを回していくことができれば、双方の事業が強くなり、メガブランドの宿命を乗り越えていけるかもしれない。

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