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2026/02/25

Treasure Data Connected World 2025 基調講演 AI時代のCDPと顧客データ活用

Treasure AI Treasure AI
Treasure Data Connected World 2025 基調講演 AI時代のCDPと顧客データ活用 左から 三浦 喬 トレジャーデータ株式会社 CEO 太田 一樹  Treasure Data, Inc. 米国本社CEO&共同創業者 Nathan Xu氏  PLAUD Inc. Co-Founder & CEO 宮野 淳子 トレジャーデータ株式会社 CMO

データ活用とAI技術の進化は、企業と顧客のエンゲージメントをどのように変えようとしているのか。2025年12月2日に開催されたイベント「Treasure Data Connected World 2025」では、マーケティングやDX推進の最前線に立つ経営者や実務者が登壇し、AI時代におけるデータ活用の在り方を議論した。

イベント冒頭のキーノートには、トレジャーデータの経営陣と、AIボイスレコーダーで注目を集めるPLAUD 創業者 兼 CEOのNathan Xu氏が登壇。AIを前提としたプロダクトの進化や日本市場における事業戦略が語られる中で、変化するCDPの役割とAIネイティブなデータ活用の方向性が示された。

AIネイティブへ進化するCDP

CDPをデータ管理・分析のためだけの基盤ではなく、施策実行や業務判断までを支えるAIネイティブな中核へと進化させることが重要。

スモールエージェントによる業務設計

短いタスクを担うスモールエージェントを組み合わせて、分析から実行までを段階的に支援する業務推進の仕組みを構築する。

会話データを業務に活かす

会話データにAIを活用することで、現場のやり取りをリアルタイムに業務へ取り込み、顧客理解を深めるとともに、次に取るべきアクションを導き出す。

トレジャーデータ 日本事業を支える3つの戦略の柱

オープニングキーノートの冒頭には、トレジャーデータ日本法人 社長執行役員の三浦喬が登壇し、日本事業における戦略について語った。三浦は戦略の柱として「お客様支援の強化」「プロダクトの進化」「ブランディングの確立」の3点を挙げる。

図:トレジャーデータは、日本事業における戦略として3つの柱を掲げている。

1つ目の「お客様支援の強化」は、顧客サポート体制の拡充にとどまるものではない。同社では、新たにCCO(最高顧客責任者)を据え、セールス、SE、カスタマーサクセス、プロフェッショナルサービス、トレーニングといった顧客接点を担う機能を横断的に統合した組織体制へと再編した。あわせて、この領域の人員を40%以上も増員するなど、顧客と向き合う体制を強化している。

三浦は、「CDPは導入すれば終わりではなく、データを活用し、事業の成長につなげて初めて価値を発揮します」と語る。その言葉の通り、顧客のビジネスの成功まで伴走する体制を整えたことを強調した。

2つ目の柱が「プロダクトの進化」だ。同社はこれまで、ビッグデータ基盤からCDPへと進化を遂げてきたが、現在はSaaS企業という枠を超え、AIを軸にプロダクトを設計する「AIネイティブ企業」への転換を進めている。

その背景には、日本国内に研究開発拠点を構え、日本の顧客やパートナーとともにプロダクトを磨いてきた開発体制がある。三浦は「現場の声を迅速に反映できる仕組みが、AI時代における大きな強みになる」と述べた。

3つ目の柱が「ブランディングの確立」になる。CDPが企業と顧客との関係性を支える基盤である以上、それを提供する企業自身も顧客やパートナーに対して良質な体験を提供する必要がある。同社では、日本発企業としてのアイデンティティを大切にし、「おもてなし」の精神を軸に据えたブランドづくりを進めている。以上、それを提供する企業自身も顧客やパートナーに対して良質な体験を提供する必要がある。同社では、日本発企業としてのアイデンティティを大切にし、「おもてなし」の精神を軸に据えたブランドづくりを進めている。

tdcw2025-keynote-3

こうした取り組みを継続的に推進してきた結果、トレジャーデータに対する信頼は国内外で着実に高まり、顧客満足度の面でも評価が積み上がってきている。世界市場においては、昨年、世界に300以上あるCDPベンダーの中で、ガートナー、フォレスター、IDCという世界3大ITリサーチすべての評価においてリーダーの称号を得る「三冠」を達成した。

そして日本市場においては、8年連続で国内シェアNo.1(2025年12月当時)を獲得し、さらに2位以下との差は年々拡大し続けている。事業面でも、日本におけるサブスクリプション売上はこの5年間で188%成長しており、こうした取り組みの成果が具体的な数字として表れている。

「SaaSの使い過ぎ」問題への対応策

続いて登壇したのは、Treasure Data, Inc.(米国本社)のCEO兼共同創業者である太田一樹だ。太田は、AI時代におけるプロダクトの在り方を、現場が直面している課題から紐解いていく。その中でまず提示したのが、「SaaSの使い過ぎ」という問題だ。

現在、マーケティングテクノロジー領域のSaaSは1万5,000社以上にのぼり、10年前と比べて約10倍に増えている。一方で、導入したツールを十分に使いこなせず、不要なライセンス費用がコストとして積み上がっている企業も少なくない。加えて、ツールごとにデータが分断され、活用しきれていないという課題も顕在化しているという。

CDPに蓄積されたデータを起点に、ツールの削減や統合ができないかという相談を、数年前から多くいただくようになりました。

(太田)

その声を背景に開発されたのが、2025年6月にリリースされた「Engage Studio」だ。Engage Studioにより、トレジャーデータは、CDPとマーケティングオートメーション(MA)を文字通り「ワンパッケージ」で提供している。CDPで統合された顧客データを起点に、メールやアプリなど複数チャネルでのコミュニケーションをシームレスに実行できる点を特徴としている。

さらに、AIの活用によって、従来は人間が行っていたメール作成などの業務を大幅に効率化できる点も強調する。数時間を要していた作業を短時間で完結できるようになり、手作業を前提としない運用が現実のものになりつつあるという。

図:AIファーストプロダクトの第一弾として2025年6月にリリースされた「Engage Studio」。CDPとMAの機能を組み合わせ、顧客データを起点とした施策実行を可能にする。

Engage Studioによって実行領域までカバーする一方で、基盤となるCDPの進化にも継続的に取り組んでいる。世界に300以上の競合が存在するCDP市場において、同社は平均して1日約30回、月間600回以上の変更を重ねながら、プロダクトの改善を続けてきた。

こうした高速な改善を支えているのが、AI活用を前提とした基盤づくりだ。Amazon Bedrockをはじめとする複数のAIサービスと連携し、AnthropicのClaude、OpenAI、Google Geminiといった生成AIモデルを、企業の要件に応じて選択できる環境を整えている。特定のモデルに依存しない構成とすることで、セキュリティや契約条件に制約のあるエンタープライズ企業でも導入しやすい点が特徴だ。

さらに、AIがプロダクトを理解しながら活用を支援できるよう、ドキュメントの整備にも取り組んでいる。新たに提供を開始したドキュメントは、人だけでなくAIも読み取れる構造となっており、Model Context Protocol(MCP)を通じて必要な情報を参照できる。これにより、構築や運用を支援するAIツール「tdx」も実現した。

「AIに『こうしたい』『ここでエラーが出た』と自然言語で伝えると、AIがドキュメントを参照しながら修正まで行ってくれる。トレジャーデータの構築や運用を、より直感的に扱えるようになる」と、太田は説明する。

実際にデータの運用にかける時間を減らし、より活用に集中できた事例も紹介された。CDPの初期構築にかかる期間を、8週間から4週間へと短縮できたという。こうした取り組みの延長線上として、太田は、データをコピーせずに活用する新たな選択肢である「Composable Mode」にも触れた。

図:「Composable Mode」を使うことで、データをコピーせず、データウェアハウスに保持したままCDPを活用できるようになる。

データウェアハウス(DWH)に個人情報を保持したままCDPの機能を利用し、セグメント作成や分析を行い、そのままEngage Studioと連携して施策を実行できる。セキュリティやガバナンスへの配慮が求められる企業にとって、データ管理と活用を両立する有力な選択肢になると説明した。

スモールエージェントが切り拓く、AIネイティブな設計

こうしたプロダクトの進化を踏まえつつ、太田はAI時代におけるSaaSそのものの在り方についても言及した。

移動手段として車が普及したときにパラダイムシフトが起きたのと同じです。AIがSaaS業務の大半を担うようになれば、人間がUIを操作することを前提とした設計は成り立たなくなります。だからこそ、トレジャーデータとしても、AIを軸にした新しいプロダクトを生み出していく必要があるのです。

(太田)

これまでのSaaSは、人がユーザーインターフェースを操作し、クリックやドラッグ&ドロップを繰り返しながら業務を進めることを前提としてきた。しかし、こうした構造そのものが転換期を迎えつつあるとの指摘だ。

図:AIネイティブ化が進むことで、SaaSはUI操作中心のモデルから、AIがタスクを主導する構造へと変化していく。

一方で、AIを組み込んだプロダクトは、従来のSaaSとは性質が異なる。SaaSが「導入して使えば完結する」ものであったのに対し、AIプロダクトは使いながら調整し、データや文脈を与え続けていくことが前提になる。

これは、従来のSaaSが基本的に「同じ操作には、同じ結果が返ってくる決定的なソフトウェア」であるのに対し、AIは「同じ入力でも異なる結果を返す確率的なソフトウェア」であるためだ。この違いは、プロダクトの設計だけでなく、サービスの提供方法や企業の向き合い方にも影響を及ぼす。

こうした考え方を背景に、同社が取り組んでいるのが「スモールエージェント」という設計思想だ。現時点のAIは、1時間程度のタスクを実行できるようになってきているものの、その成功率はおよそ50%にとどまるなど、長時間かつ複雑な処理を常に高い確率で成功させられる段階にはまだ至っていない。一方で、短いタスクであれば高い精度で実行できる。

そこで、数秒単位の小さな役割を担う多数のスモールエージェントを組み合わせ、要所に人のチェックポイントを設けながら、全体として業務を前に進めていくというアプローチをとる。太田は、こうした設計こそが、現実的に業務へ組み込めるAI活用の形だと説明した。

この思想を具体化した新たな基盤として紹介されたのが「Marketing Super Agent」だ。ユーザーが自然言語で指示を出すと、AIが必要なエージェントを選択・連携しながら、データ分析や資料作成、キャンペーン設計といったタスクを段階的に実行する。太田は、これによりキャンペーン設計にかかる時間を大幅に短縮でき、「従来と比べて10倍のスピードで施策を組み立てられる」と語った。

さらに、顧客データを活用した分析やジャーニー設計といった領域でも、AIエージェントによる効率化が進むという。その一例として紹介されたのが、顧客データをもとに個々の顧客像を再現し、対話や検証に活用できる「ペルソナエージェント」である。顧客データをリッチに蓄積することで、施策やクリエイティブを事前に試す「仮想的なテストマーケティング」も可能になるとした。

会話データを起点に、現場へ広がるAI活用

2026年春には、AIエージェントの活用をさらに現場へと広げる新たなプロダクトの提供が予定されている。その一環として発表されたのが、会話データを活用したAIプロダクトを展開するスタートアップ企業 PLAUDとの業務提携だ。キーノートでは、同社のCo-Founder & CEOであるXu氏が登壇し、トレジャーデータとの協業によって目指す世界観について語った。

PLAUDは、営業や接客といった会話をリアルタイムに記録・解析し、重要な発言や文脈を整理・活用できるAIプロダクトを提供している。代表的なプロダクトである「Plaud Note(プラウドノート)」は、会話内容を自動で要約・整理することで、現場の負担を軽減しつつ対応品質の向上を支援してきた。

今回、両社が進めるのはPlaud aiと、トレジャーデータのCDPを連携させる取り組みだ。会話データをCDPに取り込み、既存の顧客データと統合することで、顧客理解から次に取るべきアクションの提案までを一気通貫で支援することを目指している。

例えば、自動車販売の現場を考えてみてください。Treasure Dataは、年齢や収入、過去の購買履歴といった明示的なデータをすでに保有しています。これに加えて、試乗中の会話から得られる『後部座席の広さが気になる』『もっとスポーティな走りが欲しい』といった暗黙の要件をリアルタイムに取り込むことで、顧客理解は一段と深まります。会話データをCDPやERP、CRMと統合することで、AIはその場で次に取るべき提案を示唆できます。例えばイヤホンを通じて『別のモデルの試乗を勧めてみましょう』と促すことも可能です。こうした支援により、営業担当者は顧客との対話に集中でき、より的確な提案につながります。

(Xu氏)

図:PLAUDのリアルタイムAIで取得した会話データをTreasure Data CDPと統合することで、顧客理解から次に取るべきアクションの判断、営業成果につなげることが可能になる。

「スモールエージェント」の思想は、デジタル施策の自動化にとどまらず、こうしたリアルな顧客接点にも広がりつつある。AIが業務を裏側で支えることで、人はより価値の高い判断やコミュニケーションに集中できるようになる。PLAUDとの協業は、そのようなAIネイティブな業務基盤というトレジャーデータの構想を具現化したものだ。

AI時代に向けた「リフォーム」と「ワンチーム」

最後に登壇したトレジャーデータ日本法人のCMO 宮野は、ここまで語られてきたプロダクトや思想を踏まえながら、AI時代において同社が顧客とどのように向き合っていくのかについて語った。

その象徴として紹介されたテーマが「リフォーム」だ。SaaSの導入が積み重なり環境が複雑化する中で、AI時代を見据えた「作り直し」を検討する企業が増えている。宮野は、こうした状況を背景に、単なる機能追加やツールの入れ替えではなく、将来を見据えて環境全体を見直していく視点の重要性を強調した。

その考え方の軸にあるのが、「エンゲージ」の姿勢である。トレジャーデータは、自社の直接の顧客だけでなく、その先にいる顧客までを見据え、企業とともにビジネスを前に進めていく存在でありたいと考えている。

私たちは、お客様だけでなく、その先にいるお客様の顧客までを含めて支えていきたい。社員一同『エンゲージ』を掲げながら、皆さまのビジネスに伴走していきたいと考えています。

(宮野)

こうした姿勢が如実に現れているのが、ユーザー支援やコミュニティづくりの活動だ。実際の業務での活用を支援するハンズオンセミナーや、経営層向けのエグゼクティブセミナーなど、立場や目的に応じた場を継続的に提供している。また、海外を含むグローバル事例の共有や、顧客同士が学び合い、つながる機会として、年40回を超えるネットワーキングの場も設けてきた。

AIファースト、AIネイティブといった技術の進化を語るだけでなく、それを「『どう使い、どう向き合うか』までを含めて支えていく」。宮野の言葉は、トレジャーデータがテクノロジーベンダーを超えて、顧客とともに変化を進めるパートナーであり続けようとする姿勢を改めて印象づけるものとなった。

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