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2025/12/15

TSI、トレジャーデータ新機能の活用事例を語る

Treasure AI Treasure AI

株式会社TSI(以下「TSI」)は、「ナノ・ユニバース」「マーガレットハウエル」「パーリーゲイツ」など、37ブランド(2025年8月現在)を運営するアパレル企業。Treasure Data CDPの新機能を積極的に導入し、先進的なデータ活用のモデルケースを生み出し続けている。
トレジャーデータが2025年6月にリリースしたEngage Studio、2024年から開発を加速する生成AI機能も早々に導入し、試行錯誤を進めている。株式会社TSI EC事業統括部 / CRM・マーケティング部データマネジメント課課長の竹山健司氏(2025年9月時点)が、実際に社内で行った事例と、自身のリアルな所感を語ってくれた。

竹山 健司

株式会社TSI
EC事業統括部 CRM・マーケティング部データマネジメント課 課長 ※2025年9月時点

竹山 健司

2017年TSI ECストラテジー入社2021年3月、会社統合に伴い株式会社TSI所属。主に下記業務に従事

  1. CDPを活用し、データ構築・分析及び担当領域の施策提案・ターゲティング抽出・施策実施・効果検証を担当
  2. グループ会社(自社サイト含む)の各ブランドにおけるWEB広告領域・MA/KARTEを活用した施策提案や実施の支援

試算ではROIが230%向上、Engage Studioの実力は?

竹山氏はまず、Treasure Data CDPを活用する上での主な狙いを整理した。「データ抽出後の速やかな連携・活用」「自動化による工数削減」「サイロ化したデータの統合」の3点だ。

Treasure Data CDPは標準で、各種マーケティングツールとのコネクタを搭載しており、外部とのデータ連携に、大規模な開発を必要としない。データ処理を自動化するTreasure Workflowは、日単位、月単位のセグメント作成などルーチン化された業務を自動的に実行し、工数削減に大きく寄与する。従来、同社が分散的に管理していたCRMやECサイトの購買履歴、スタッフのコーディネート、メールアドレスやLINE ID等の顧客データは、一括でCDPに統合。同社はこうしたCDP活用を通し、深い顧客理解に基づくOne to Oneのマーケティングを実践してきた。

コミュニケーションを高度化するなかで、さらにスムーズなデータ活用のニーズが生じている。現状はMAツールのKARTEから、メールやLINE、アプリを通して顧客にメッセージを送信している同社。いかにデータ連携がスムーズでも、データ基盤と「メッセージの発射台が分かれている」状態に、竹山氏は改善の余地を見込んでいた。CDPとMAが同一のシステムに統合できれば、連携の必要すらなく速やかなデータ活用が可能になり、MA側の運用が改善すると考えたのだ。

トレジャーデータはこうした要望に応えるべく、2025年6月にTreasure Data CDPに新機能Engage Studioを追加。CDP内で作成された顧客プロファイルに対し、外部システムを利用することなく、個々に最適化されたメールを配信できるようになった。

竹山氏は、「Engage Studioで実現したいこと」として次の4点を挙げ、検証を行った。

1.メール作成工数の削減
2.高品質なメールの簡単な作成
3.柔軟なセグメント配信
4.運用負荷の軽減と業務の簡素化

Engage Studioを導入した場合、既存のメール配信と比較して年間ROIが230%向上する、との試算が出たという。TSIはEngage Studioをテスト採用し、新たなマーケティング施策を始めている。

「超休眠ユーザー」を対象とする8月の初回施策では、売上への直接的な影響はなかったものの、開封率、クリック率は「このターゲット層としては悪くない」(竹山氏)と及第点。一方、メール内の「アイテムをもっと見る」ボタンからの流入が多いという発見が、他のメール配信でも同様のボタンを設置するとの改善につながった。

竹山氏はEngage Studioに対する自身の所感として、「外部ツールと連携する時間がなくなり、業務の効率化につながった」と述べる。ドラッグ・アンド・ドロップやブロックの移動でメールを作成できるなど、直感的なUIも評価した。
一方で、動的要素のプレビューができない、などの課題、LINEやアプリでのメッセージ配信(現状は非対応)にも触れるなど、今後の改善、アップデートへの期待を示した。

生成AIが社内にデータ活用を広げる

続いて竹山氏は、トレジャーデータが導入を進める生成AI機能に言及した。AIに自然言語で指示を与えると、データ分析からセグメント作成まで自動で実行するAudience Agentなど、CDPにおける生成AIの活用を推進。直接的なマーケティングの成果だけでなく、データに関する社内のリテラシー向上につなげている。

まず、竹山氏が挙げたのは、営業部門のデータ活用事例だ。
竹山氏らマーケティン、グチームは、SKU単位で店舗とECサイトの販売数、在庫数を示すダッシュボードを作成しEC部門の営業チームに共有した。生成AIを活用したことで、構築はおよそ2週間で完了したという。
営業チームのメンバーは、SQLの記述など専門的なスキルは持たないが、以前からデータ分析に関心を持ち、Treasure Data CDPを自ら活用する意欲は高かった。例えば、売れ筋商品の在庫が自社ECサイトで欠品していうるのではないか、といった仮説を
実データで確認し、抽出したかったので。

従来そのアウトプットは作成していなかったが、今回のデータ抽出すると、
仮説どおり店舗とECの在庫のギャップが見えてきた。このことは、あるはずの商品が販売できない機会損失でなく、さらに潜在的な顧客満足の低下を示唆する。
同社は、顧客がお気に入り登録した商品を入荷したり、値下げしたりすると、メールで知らせる仕組みを採用している。しかし、ECでの欠品が続き、待っていても通知が届かなければ、顧客の登録する意欲は失われていく。結果として、ブランドに対するエンゲージメント低下を招く恐れがある。
こうした分析は、EC部門の社内交渉力を高める有効な材料となる。生成AIにより多様な視点からデータの可視化が進むことで、販売の効率化、顧客満足度の向上など、全社的な経営の最適化がなされていくはずだ。

竹山氏はもうひとつ、クーポン施策に関する事例を紹介してくれた。
これまでは割引クーポン等の配布後、その使用状況は把握しているものの、後の行動までは確認していなかった、と竹山氏は言う。生成AIにより、購買履歴を時系列で追跡・分析できる仕組みを構築すると、貴重な発見があった。
通常、購入回数を重ねた顧客ほど、次回以降の購入確率も高い。裏を返せば、繰り返し購入してもらうように導くことがマーケティングの課題であり、特にF2転換率(初回購入者のうち2回購入する割合)は重要な指標になる。
今回竹山氏らは、未購入者にクーポン配信を行い、後の購買データを追った。すると、F2変換率は平均の26%に対し、42%まで上昇したという。これまでは、主に売上だけで施策の効果を判断していたが、生成AIでデータを深堀りしやすくなり、新たな気づきからマーケティングの改善を検討できるようになった。

最後に竹山氏は、クロスブランド化の分析事例を示した。
同社は2025年2月に約30のブランドが集まるECサイト「mix.tokyo」をオープンしている。異なるブランドで2点以上購入すると10%オフ、などのクロスブランド施策を促進。その効果測定に、生成AIによる分析を活用している。
今回は大きな成果をあげることはできなかったが、時期を変えて再度実行、検証を
予定している。

生成AIの最大の利点は、データベースの知識がなくても、自然言語でデータと対話し、容易に回答を得られることだと、竹山氏は語る。これまで、分析に苦手意識を持っていたメンバーも、直接データに触れる機会が増え、組織全体のデータ理解が深まっていると、手応えを感じている。取り組みは始まったばかりだが、データ活用の多様性をAIが一段階高める可能性を、TSIの事例は示してくれた。

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